媚薬
<海表>
その夜は海馬邸のパーティーだった、けれどやはり慣れないもの。
遊戯は疲れた振りをして、そっとテラスへ抜け出していた。
でも。遠く喧噪聞こえて来る…ひとりぼっちを自覚して。
「はあ…」
夜風の冷たさも手伝って、ため息ばかりついてしまう…
と。
「…!?」
手すりの上の遊戯の手、そこへ誰かの手が伸ばされた…
「駄目…だよ」
重ねられた手に撫ぜられる、ゆっくり身体の芯まで煽るが如く。
「…広間からは死角になる、その上いまだ残るは酔っ払いのみ」
遊戯の震える手などたちまちに長い巧みな指に絡み取られて動けない…
「あ…」
思わず身を竦める様を愉しむ様に低い笑いが耳へと届く。
その上戯れの様に背後から、髪を嗅ぐよな仕種され。頬も身体もますます熱い…
「ズルい…よぉ!」
「何?」
「ボクばっかり…いつも…」
「…それはこちらの台詞だな」
「え?」
「お前は判っているのか?お前の声や仕種がどれ程俺を煽るかを…」
「俺ばかりでは分が悪い、お前も少しは熱くなれ」
キスせんばかりに近付いて、耳元じかに低い声。
「お前は甘く滴る格別の蜜、俺にとってこの上無い…」
「…最高級の媚薬なのだ
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