真夜中の水族館
<海表>

 全くもって夜らしく辺りは酷く暗い。だが遊戯達のいる場所だけ、ほのかなフットライトに照らされて。暗闇の中を歩む不安は少しも無い。
 何より…

「こんな夜遅くなのに…泳いでる魚、こんなにいるんだね!」
「…ああ」

「そうだな…」

 返って来る、低い低い声。
 それだけで。遊戯の心に光が灯る…

(…海馬くん…)


「だがこんなモノは序の口だ」

「来い、格別のモノを見せてやる!」
「…え?」



 少し強引に連れられて来た水槽の前、海馬の示す先を覗き込む。
「わあ…!」

「星が…お魚になって…泳いでるよぉ!」
「ああ」

「夜の海の至高の宝玉…夜光魚だ」


「だがな」
 パチン…海馬がリモコンにて操作した途端、水槽の照明が復活する。急な明りに右往左往、遊戯も見ていて慌ててしまう…
「駄目だよ!急にそんな事しちゃ!」
「…見ろ」

「先刻の夜光魚…今はどう見える?」
「え…?」
 同じ魚が、今は。
 ぐっと…地味に小さく見える…?

「あれ程の神秘の輝きが無粋なライティングの中では埋没する…」
 いささか、苦々しくも聞こえる声。
 パチン、そして再び闇落ちる…

「しかし果ての無い闇の中にあっては。それは道を照らす灯火となるのだ」
「うん…」


 闇い水槽の中で。幽玄の光がふわり過ぎて行く…



「…遊戯」
「え!?」
 不意に。耳元すぐで、声。
「まるで…」


「…お前の様だな…」
「え…」

 どきん…



 背後は水槽、逃げ場の無い場所で。
 ゆっくり近付く青の双眸に…遊戯はそっと瞼を閉じていた。


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