抱き枕
<海表>

「海馬く〜ん!」
 …弾む様な声とともに、遊戯が書斎へとやって来た。
「見てよ!モクバくんの所の新しい抱き枕!!すっごく柔らかいんだよ〜♪」

 遊戯は自分の身体程の布の塊を。実に嬉しげに抱えている。
 余程気に入ったのか、恐ろしく強く抱き締めていた…


 …俺とした事が。
 器物如きに嫉妬とはな。



「ね?触ってみてよ〜♪」
 …全く遊戯と来たら暢気なモノだ、俺の内心なぞ気付きもせん。
「ね〜!ホント、ふわふわで柔らかくて!だっこすると気持ちいいんだからあ…」

 遊戯が邪気の無い顔で。抱き枕を差し出した。
 その純粋の笑みが…却って俺の心を刺激した。

 …フン。
 布の塊なぞに心を移しおって、相応の罰が必要だな!



「ね、触っ…」
 はしゃぐ声が中途で止まる、無理も無い…俺は詰まらん綿の塊なんぞには手を出さん。そんなモノより遥かに価値のある、跳ねる癖に柔らかなモノへ…
「確かに…柔らかだな」
 遊戯の髪の感触は。何とも得難いモノだった…


「そう言えば、」
 …ニヤリ。
「抱き枕…だったな?」



 頬を朱に染めたまま、遊戯が懸命に暴れている。
 だが。俺は聞こえん振りをして、さらに腕に力を込めていた。


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