カルボナーラの作り方
<バクラ&獏良>
キッチンで作業をしていると、ふわり何かが覗き込む。
『何やってんだあ?…宿主サマ』
「ん?別に…料理だよ」
『…ンなこたァ判ってるがよ』
『ナーニ作ってんだよ?』
「…カルボナーラ」
『カルボナーラ??』
「何?お前知らないの?…ほんっと物知らずだねえ、余計な事は無駄に知ってる癖にさ…」
『うるせえ!…じゃねえよ、それ位は知ってるぜ』
「ん?じゃあ何が疑問な訳?」
『なあ…』
「ん〜?」
『其処に並んでるモンはよォ、つまり…材料だよなァ、カルボナーラのよ』
「そーだけど?」
『つーかよォ…アレってイタ飯の一種だろォ…?』
途方に暮れた視線の先、クリーム卵ベーコンに続いて…味噌のパックがでん!と鎮座。
「え、これの事〜?」
さも心外そうに獏良が言う。
「別に…味噌、入れるよカルボナーラに」
『…はああああ!?』
「あ♪判って無いなあ…」
にこにこにこ、獏良が笑顔を浮かべてバクラを見る。
「ま、素人だし、しょーが無いけどねえ…」
『って、判ってねェのはそっちだろが!』
『味噌っつったら和食だろ!?つか、洋モンの料理でもよ、味噌なんざ入れたらたちまち和風だろ!?何イタ飯なんかに入れてんだよ!?』
「…とつくにびと何かに言われたく無いなあ…」
『だってよ…そーだろが』
「でもねえ」
変わらず獏良はマイペース、玉葱を刻みながらのんびりと。
「ちゃあんとね、意味…あるんだよ?」
「パルメザンチーズって知ってる?」
『…知ってらあ』
「あっそ、なら話は早いんだけど」
「カルボナーラの独特の風味ってね、結構パルメザンの味がメインだったりするんだよね〜♪」
『…へえ?』
「ただ塩辛いとかじゃ無い…ちょっと、酸味みたいのが重要なんだよ」
「だけどさあ、パルメザン買うと高いし〜、削るのめんどくさいし〜…」
『…お前二言目にはソレだよなァ…』
「でもこれ無いとパンチが効かないし…」
「で、酸味なんだけど」
『あン?』
「ほら…酸味ってさあ、発酵食品ならではの味だよねえ?」
『…は?』
「だから、代用品で味噌って訳!」
『…マジかよ…!』
『はァ…』
実体の無い姿のまま、ぐったりその場で大の字になって。バクラが疲れた顔でぼやいている。
『ったくよォ…てめェの話にゃ付いてけねェよ…』
「え〜?お前に言われると何かムカつく〜」
『…言ってろ』
『ま、作って貰えンならよ、何だって食うぜ宿主サマ』
「え、何言ってんの〜?」
「これ、ぼく一人分だよ?」
『何〜〜!?』
『かー!やってられねェぜ…』
疲れ切った表情でバクラはソファーにごろりとなる。
『おい宿主サマ…チャンネルよ、変えてくんねえかァ?』
「何でぼくが〜」
『勘弁してくれよォ、今リモコンも持てねェんだからよォ…』
「全くさー、闇の力で何とかしろよなー」
ぶつぶつ文句を言いつつも、パチパチチャンネル変えてやる。
「で?これでいい訳?…世話が焼ける奴〜」
『…へえへえ』
…フライパンの上ではベーコンが食欲誘う香りを放っている。パスタ鍋の中味もぐらぐらだ。
獏良がそっと振り返ると、番組に満足したか『同居人』は結構静かに見入っている。
そんな様子に少し笑って。
鍋にパスタを投入する…
それも、ちょうどかっきり二人分。
そう、最初から。そうするつもりだったのだ…
本当は。
だって。いいだろそれ位。
初めの頃は本当に…
怖かったんだから…ぼくだって。
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