微睡み
<海馬>

 遊戯が、俺の書斎に来る事がある。
 俺の作業の邪魔をするな、少しでも騒げば摘み出す…そう言っても決まって笑顔で頷くのみ。無論あいつが俺の邪魔なぞする筈も無く、存在をうかつにも失念する事すら起こる程、酷く静かに過ごすばかり…

 むしろお前の声が幾許なりとも、聞こえる事が。
 俺としては幸なのだぞ?

 しかし。
 今日は中でも格段に、部屋の静寂より一層。
 流石の俺も不審を覚えてソファーセットの方へと向かう…


 …フン。
 成る程、こう言う訳なのだな。



 隣室より毛布を一枚運び込む。静かにしろとは確かに言ったが、しかしこれは少々油断が過ぎるぞ?
「最早、昼寝の季節でもあるまいに…」
 しかし。
 その微睡みの表情は…何とも言えん安らぎに満ち溢れていた…


 この俺の、執務の部屋にて。そうまで無防備になれるとは。
 お前は何故、そうも心を許すのだ…?



 いささか取り残された感もあるからな、戯れにその頬を撫ぜてやる。
 わずかにくすぐったそうに身じろいだがやはり抵抗何も無い…

 全く、お前と言う奴は。
 そうも無防備な姿を晒されては…
 俺とて何も出来んでは無いか。


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