微睡み
<遊戯>

「30分経ったら起こせ」

 その一言を発するや否や、海馬は本当に眠ってしまっていた…

 戸惑う遊戯の、膝の上で。



 彼がどれ程多忙に過ごしているか、知らない遊戯では無い。またわずかな物音にも反応する過敏な神経故に、眠りが浅い事も知っている。
 なのに…

 海馬は。常の彼を知る者が見れば仰天するであろう程の無防備さで。
 遊戯の膝を枕にして、酷く穏やかに微睡んでいる…


「海馬くん…」


 囁く様にその名を呼ぶと。
 気の所為だろうか、その表情に浮かぶ笑みが深まった…



 ここにいるのがボクだから…海馬くんぐっすり出来るって。
 自惚れても…いいの…?




「兄サマ〜!」
 ばたばたばた、モクバが廊下を駆けてやって来る。
「兄サマ!あのさあ、この書類…」
 何の気無しに足を踏み入れて。あっとなってモクバは口ふさぐ…


 其処にいたのは…安らいだ様子で眠る兄と。
 その額にそっと手を添えながら…同じく天使の様に微睡む遊戯の姿…


「…うわあ…」
 起こさなければいけない事はモクバも判ってはいるのだが。
「参っちまうよなあ…」


 幸福な一枚の絵画の様な情景を前にして。
 モクバが困って頭を掻いていた。


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