<海表>

 童話の類の定番の、魔法使いだの妖精だの…俺は昔から、あの手の連中が嫌いだった。
 こちらの願いを容易く叶える、そんな都合の良い存在なぞ。いないとはっきり判っていた…


 夢は己の力で掴むモノ、それが今も昔も俺の信念だ。
 だがこうしてキーを叩いている折も、時に心ぐらつく事もある。

 懸案事項は山積みだ、どれから手を付けるべきかも頭痛の種。
 そして。必須の作業と理解しても…この下らん単純作業の山は何なのだ!

 今も輝く俺の夢は…しかし。
 時として。果てしなく果てしなく、逃げ水よりもまだ遠く。
 俺は。暗黒の奈落に取り残された心地すらした…


「…海馬くん」
 まるで俺の心の叫びが聞こえたか、不思議な程のタイミングで。そっと伸びた小さな手、俺の腕に静かに触れる。
「だいじょうぶ、海馬くんなら…どんな夢だって叶うもの!」
 ふわり…微笑みが俺を包み込む…


 ああ、そうだな。俺には全てを叶える力がある。
 お前と言う…夢の妖精がいるからな。


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