手袋
<遊戯>

 「わあ…」
 遊戯の眼の前に、海馬の手袋。
 特別誂えのシックで大人な手袋で。その風合いには気後れしてしまう程…
 ワンポイントのブルーアイズのシルエットでさえ、気品を高めこそすれおとしめはしない。

「海馬くん、手袋まで海馬くんだね…」

 ここには不在の、かの人…



「…大きいなあ」
 勇気を出して手にはめても、指の先がすっかり遊ぶ。
 今度は再び外して手に当てて、その大きさの差を比べて見る…

「凄いや…」

 手の大きさ、指の長さ。どれを取っても随分な差。
 正直少し悔しい、けれど。

 あの長い指でひらりと鮮やかに。
 カードを繰る様を思い浮かべると…


 …どきん…


「海馬…く…ん…」

 思わず発した自分の声は。
 まるで、譫言の様だった…


「…何だ」
「!?」
 …やにわ後ろから抱きすくめられて慌てて相手を見上げれば。
 其処にいたのは海馬瀬人、その人…!



「…器物なんぞに構うな」
 遊戯を確と拘束したままいささか不機嫌な海馬の声。
「そんなモノなんぞより…」


「この俺がいるのだぞ…?」


 手袋に代わって遊戯を包む本物の手、海馬の大きな…手。
 胸のどきどきは…もうちっとも止まらない。


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