恐怖の食卓
<バクラ&獏良>
だらだらだら…山と詰まれたシュークリームの前で。バクラは冷や汗をかいていた。
『どうしたの〜♪』
いつも通りにっこりと、獏良が笑顔で見守っている…
否。
見張っている…
汗はちっとも止まらない。
いつも笑顔の獏良だが、決して怒らない訳では無い。確かに怒りの閾値は高いのだが、実は一旦導火線に火が付くと凄まじい事になる性質である。
特に、怒りの対象がバクラの場合には。
…まあ、一応判らないでも無い、確かに獏良は被害も相当受けている。
しかし。いつもながらに思うのだが…
(…この無駄に手の込んだ復讐は何なんだよ宿主サマァ!!)
眼の前にはシュークリーム、勿論獏良の手作りである。
しかし。その内一つには、何やらトンデモ無いモノが入っていると言うのだ…
『勝負だよ〜♪』
にこにこにこ…いっそ朗らかに獏良は言った。
『ルールは簡単、当たっちゃった方が負けだから!』
『罰ゲームは…勿論、それを黙って全部食べる事!』
…そりゃねェよ宿主サマ、てめェだって危険だろが…そう言った所で聞いて貰える筈も無く。
有無を言わさず強引に、バクラは恐怖の食卓に着かされた次第である。
『じゃ、ぼく後ろ向いてるから!どれにするか決めたらさ、よーくシャッフルしとくんだよ!』
「…うへえ…」
泣こうが喚こうが始まらない、死ぬ思いで一個一個のシュークリームを確かめる。何処かに目印でも無いだろうか、はかない希望を持って調べたのだが…
そんなモノ、何も無い。
それ以前にどの菓子も、店で売れる程に形大きさ揃っている…
『ねえねえ、まだなの〜?』
獏良にさんざに急かされて、泣く泣く一個を当て推量で選びだし。
そして必死で懸命に、シューを滅茶滅茶に『シャッフル』した…
常以上に笑顔の獏良に見張られたまま、悲愴な覚悟で食したシュークリームは。
幸い、まともなカスタードクリームの味だった。
(クソが…何でオレ様、こんなに神経摩り減らしてンだよ…)
ほぼイーブンの勝負なだけに、獏良も同じ思いをする事だけが救いだった。
しかし…バクラは完全に甘かった。
「…はい、おっけーだよ〜♪」
『げええ!?マジかよ!?』
「うん、マジマジ」
自分の番が巡って来て、バクラが後ろを向いて幾らも経たぬ内。獏良は瞬時に自分のシューを選んでいた…
(オレ様だってあンだけ悩んだんだぞ!?第一滅茶滅茶シャッフルしたのによ…)
「えーと、どうかなあ?…あ!我ながらいい感じ〜♪」
ぱくぱくぱく。唖然とするバクラの前で、獏良は嬉しそうにほおばっている…
何でだよ!こいつちっとも緊張感ってモノがねえ!
何でオレ様ばっかり…不公平じゃねェか!
「うふふ、だってさあ…」
に〜っこり笑って獏良が言う。
「ぼくってさあ、意外と引き、いいんだよね〜♪」
『…てめェまさか』
そんな気は、していたが。
『何の仕掛けも無くてもよ、自分は絶対当たらねェって…思ってるのかよ!?』
「うん!」
「もっちろ〜ん♪」
だらだらだら、汗はどうにも止まらない。
別に命を賭けている訳でも無いが、精神のライフが無体に削られる…
この勝負、本当に。
シューが無くなるまで続くのだろうか…
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