インク・カートリッジ
<その後・遊戯>

 一足飛びに社員になれと、そう強く誘われた。
 でも。その信頼が嬉しいからこそ、敢えて選んだフリーランス、毎回毎回コンペに挑む厳しい道…だけどゲームだったら大好きだから頑張れる!

 でも。
 それだけでは駄目なのだ…


「…あ」
 高い光沢紙をセットして、プリントしてから気が付いた。イエローインクが怪しかった筈…幾ら何でももう限界。
 そして悪い事にこのプリンター、安かったけれど旧式で。インクが切れても止まらない…

「あ〜あ…」
 資料に使うジャングルの写真だったのに。一体どんな奇怪に化けてしまった事だろう…


「…え?」


 鬱蒼として暗かった緑が中途で消え、何処か透明な…沈思するよな青一面に。
 そして。少しくどい位に朱色の南国の花も。今は…

 不思議の紫、それはまるでアメジスト…!


『お前の瞳、そのものだな…』


 そう囁かれた…あの宝石の色が。
 広がるクリスタルの青の中に包まれている様だった…



 …海馬くん…




 冬の夜風は殊更冷たい…でも負けずに外へと駆け出して行く。
 少し遠いが店だってある、替えは買いに行けばいい。


 あの青が見ていてくれるから。
 ボク、幾らでも…頑張れるよ。


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