メルヘン
<遊戯>

 遊戯は吹雪の中を歩いていた、裸足で一心不乱に歩いていた。
 寒風は比喩でなく肌を刺し、極光は不気味な程に乱舞する。さらに真っ白な木立の向こうから、残酷な雪の軍勢迫って来る…

(でも…ボクは行かなきゃ)

 心に浮かぶ、少年の姿。
 端正な顔立ちに優しい笑みの少年は氷の刺の呪いを受け、この世の真の姿が見えなくなり。挙句、氷の世界に連れ去られ…
 冷たい氷のパズルを組み上げるまで。呪縛解く法無しと言う…

(キミを…暖かい所に連れ帰らなきゃ!)

 襲い来る冬の怪物前にして、遊戯に何の武器も助けも無い。
 …それでも!

 彼を助けたい…その一心で。
 何より。彼に…会いたいから…!

(ボクは諦めない…絶対に!)


(この想いだけは…誰にも負けないから!)




「…あれ?」
 気付けば豪奢なソファーの上。うたた寝していたらしい…慌てて飛び起きるとくしゃみ一つ。
 …少々空調も贅沢に過ぎたのだ…
「だからあんな夢…」
 欠伸をしながらぼんやり見ると、テーブルの上に読みかけの本。何の気無しに覗き込んだのだが…

「あ…」

 その物語は「氷の女王」…そして。
 氷の刺より救われた、あの少年の名は。

 カイ、と言う…


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