お菓子
<海馬>

 テーブルの上には各種の菓子、それも勿論甘い物。しかしファンシーなラインナップとは裏腹に、睨む様な視線が注がれている…
「兄サマ…」
 たまりかねてモクバが言う。

「あのさ、やっぱりオレが…」

「何を言う!」
 カッ…!海馬の眼光鋭く光る。
「俺が贈るのだ、俺自身が選んでこそ!」
「だけど…!」
「ええい止めるな!」

 …ガシッ!!
 海馬のその手がにっくき甘味をぎっと掴み。鬼の形相にてガブリと噛む!
 幾つも並んだその菓子を、次から次へと…凄まじく!

「兄サマ…?」
 その手が遂に最後の菓子に伸びるに至って、思ったよりは甘味嫌いも治ったのかと幾分安堵していたのだが…

「くっ…!!」
 顔に浮かぶは苦悶の表情、ぐらりその長身傾いで行く…!
「兄サマ!?」


「モク…バ…」
「え?」
「右から…二番目…だ」


「甘さこそ気違いじみた代物だが…粉とバターに嘘が無い…」


「贈るに相応しい…職人技だ…ッ…」
「…兄サマッ!!」



 …海馬は完全にぐったりと、ソファーに横になっている。
 苦手なモノはやはり苦手、それでも決して手を抜かない…

 そんな兄に苦笑して。
 モクバは内線機を手に取った。


「苦いコーヒー…特急で頼むぜい!」


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