やはり短いですが…今度はちょっと趣向を変えて。





「え…?」
「何だ、嫌か」
「ううん!そうじゃ無いけど…」

「でも…」

「また、分が過ぎるとでも…?」
「う、うん」

「…フン」


「そんな下らん理由なら、却下だな!」
「え…ええと…」
「と、言う訳だ」

「今すぐ超最新鋭バーチャル世界にダイブするのだ!」
「え!い…今すぐ!?」

 海馬は。驚く遊戯を見て…ニヤリ傲岸に笑んで見せた。




「わあ…」
 豊かな緑と幻想の、そこは夢の世界。
 海馬の作ったバーチャルワールドを訪れたのは初めてでは無いものの、しかし記憶にあるよりさらにグレードを増している…
 海外での切磋琢磨が、高い技術力をさらに飛躍させたのだ。

 調整が必要になったと…異国の空の下、遊戯を宿に一時残して海馬が作業をしていたのは。
 つまり。この世界へ遊戯を招くため、その調整だったのだ…

「すごい…もっともっと、夢みたいになってる…!」
「当然だ」

 一見素っ気ない返答にも、自負の程がにじんでいる。
 遊戯はそっと微笑んだ。



 『フェアリー』の舞う美しい世界を海馬と二人歩いて行く。無論、今や幻想世界の住人となった二人の姿は常とは違う…白い神官服を纏った海馬に、簡素なチュニックの遊戯。以前プレイした時と同じクラスの装束である。
 だが。前と同じだからこそ、ふと気付いてしまう寂しさもある…

「どうした」
「…あ」

 ぼんやり物思いにふける内、足が止まってしまったらしい。

「海馬くん、ごめん!」

 遊戯が早足で追い付くの確認し、再び海馬は歩き出す…

(海馬くんは…いつだって前を目指してる…)
 そうしようと幾ら思っても、時折立ち止まってしまう自分。
 気付かれぬ様にため息を付く…

「…少し歩くぞ」
「え…?」
 何処へ?と尋ねる間すら無く、海馬はどんどん進んで行く。


「ええと…?」
「ここだ」

 海馬の後を駆け足気味で付いて行って、やっとで辿り付いた場所。
 そこには宝箱が二つ、並んで置いてある。

「これ…?」
「見れば判るだろう」

 海馬が箱の上を指す。一目でそれと判る、パズルらしきもの。
 どうやら解けば蓋が開く仕組らしいが…

「あの…?」
「さっさと解け、危険は無い」
「うん…?」

 危険は無いと言いながら。何故か、海馬が後退ったのが気になるが。
 解けと海馬言う位だから…実際危ない事は無いのだろう。
 さっそく遊戯はロックの解除を開始した。


「…出来たあ!」

 ガチャ、ガチャガチャッ!
 程なくして、二つの宝箱の鍵が完全に解かれた。
 これでもう、どちらの蓋も開いたも同然…

「何が入ってるのかなあ…?」

 期待に胸を膨らませる遊戯の背後で。さらに海馬が後退する…


『クリ〜〜〜♪』
「わあ!クリボー!!」
『ボヨヨ〜ン☆』
「え!マシュマロンまで!」

「わあ…嬉しい〜♪♪♪」
『クリクリ!』
『ボヨ〜ン!』

「…気は進まなかったがな、今回は雑魚も正式登録した…お前の仲間と言う訳だ」
「え…」
「お前のためだ」

「…苦労したぞ」
 常通りの傲然とした口調、しかし今や海馬の姿は…背景に溶け込みそうな程に下がっている。

(そんなに…駄目なのかなあ?)
 ちょっとだけ、苦笑。
 そして不意に一つ思い付いて、自分のアイデアに…少し赤くなる。


 でも。
 今、海馬の姿があんなに遠くに離れているのは。つまりそれだけ頑張ってくれたと言う事で…


「クリボー、ちょっとマシュマロンと遊んでてね!」
『クリ!?』

 遊戯は勢い良く地を蹴り走り出す…


「海馬く〜ん!」

「…遊戯?」

「海馬くん、海馬くん…!」
「…!?」


「な…」
 驚きに眼を開く海馬の両腕の中、遊戯の身体がすっぽりと。
「ありがと…クリボーとマシュマロン、この世界に連れて来てくれて…」

「でも…」
「でも?」

「あの…あのね、海馬くん…」
 染まる頬を隠しても、震える耳がまだ赤い…
「ボク…」


「一番一緒にいたいのは…海馬くん、なんだ…」


「遊戯…」

 瞬時、さらに眼を見開いた海馬だったが…やがて。
 ククッと笑って腕に一層力を篭めた。



 クリボー大好き、それにマシュマロンも。
 どんなに寂しい時だって、ボクのモンスターが一緒なら、とってもとっても心強い。
 でも…でもね。

 一番は…やっぱり…



Fin.



 前に来た時は…もっとメンバーいたからね…
 しかしどーもマシュマロン、『ボヨン』が微妙に緊張感を削ぐな!(笑)


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『へっぽこカイオモスキー』たんぽぽ太郎
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