その時、体内から少しずつ失われて行く流れをそっと静かに見つめていた。
ゆっくり、ゆっくり。やはり随分と赤いものだ…
それは、血液。
しかし。それはほんの序章に過ぎなかったのだ…
あの頃はまだ20世紀だった。あの頃はまだノストラの夢(←夢かよ!)が残っていた。あの頃はまだ…世界が少しだけ若かった。
そしてあの日。ハンドル詐欺氏(仮名)はまだピチピチ(死語)の大学生だったのだ。
若さとは無限か?…否、キャパに限りがある。それを無限と思うはただの愚者、己の力量の限りを見極めぬ故の錯覚に過ぎぬ。それゆえ若者は…悲しいかな…無謀に身を躍らせ無残に散って行く。後には若さの墓標がただ延々と続くのみ。
ただ。限界を知らぬと言うのは妬ましくも羨ましい事だ…
その日の気分は端から最悪だった。体重が何故か3キロばかり減った…と言うのはもはや些末、常にフラフラフラフープ状態である。そんなフラ(以下省略)が例によって例の如く、貴重な昼休みを学食周辺を徘徊しながら無為に浪費していた時に全ての発端が詐欺氏の前に現われた。
「献血にご協力ください」
その看板を見た時、既にしてへにょへにょの極みにあった詐欺氏の頭にピカーッと閃くものがあり…そして決意した。
「よし!俺様の血をくれてやろう!」(態度LL)
…これを聞いて(まさかいないとは思うが)詐欺氏が殊勝だと思った人はいささか気持ちが優し過ぎる。この詐欺氏、基本的に己の欲得に益せぬ事は一切せぬ性根、その時も全くただただ己の野望のみを心に思い浮かべていた。それは…
己の、血液型を知る事ッ!
…はあ?
そんなモン、端から分かってンだろ!と憤られるのも御もっとも、しかし世界はワンダーに満ちている。この現代日本の近代社会で、自分の血液型を知らぬ者が…実在しようとは!
いや無論親には何度か尋ねている。しかしその度気の無い返事、「別に調べた事は無いよ」と素っ気なく。まア確かにそれも道理は道理、父と母とがともにA、ならばその子は当然ながらAかOか二つに一つ…つーか確率的にAだろな。しかしのう、フツー出生時に大概調べると思うんだが…ぬぬぬ、幼心にも疑問符浮かび、この身はやはり捨て子拾い子橋の下、俗に世に言う醜いアヒルの子、俺はきっと白鳥の子なんだアー!と夕日に向かって叫んだ…訳は無く。出生時の記録は実はあるらしいのだが、所謂熱力学の第二法則、エントロピーの摂理に従いて、混沌の海の藻屑と消えた由。
まアとにかく、このまま捨て置けば血液型占いもままならぬ。
いや血液型で性格は決まらぬぞよ、と水を差される御仁もおるが。左様確かに相違無い、ABOで表わされる、その型を決める物質ども、その分子量がちとデカい。人の脳とは大事の臓腑、その脳をば護るにB−B関門、いや昨今のお上の方針に従いて漢語で言うなら脳血流関門、ソレを通るにゃデカ過ぎる。ゆえに即ち血液型、これの種別を脳は知らず、性根気質を決めるが脳なるならば、やはり血液の型なんぞ人の心の定まるにほんの少しも寄与せぬ次第。
…とまァ、固く言えば息苦しい、占いちゅうのは所詮皆々当るも八卦、外るるも八卦。やはり全く出来ぬより、血液型占いが出来た方が良かんべえ…つーか、万が一の輸血の時に困るっちゅーの!
それでとにかく詐欺氏どん、献血カーへといざ出陣。
だが…
場、場違いや…!!
だだだだってですよ、何故にか献血常連者ちゅうのは皆美形揃いでげすよ。ほれ、そこで親しげにナースと喋っとるのはキムタクと長瀬を足して二で割ったよな奴、それに血ィ抜きながらリラ〜ックスしとるのは元スピードの某嬢に激似、で、そこらをにこやかにいそいそ歩く、働き者のナース軍団がまた美人揃い。献血前の問診表に一緒懸命記入している若い子も、セミロングの頃の優香みたよな癒し系。
こ、こ、こ、これはコココココケコッコー、何者かによる陰謀か!?とマジで疑う位にバリ違和感。何でオイラなんぞが混じっておるんや、これじゃまるでマゾーンの中に突然変異でヤッタランが産まれちまったみたいな…って、ヤッタランならアリかもな(笑)…つーか、最近の人はヤッタラン知らないかもな…(寂)漢なのにのう
とにもかくにもあっさりすいすい事進み。血はするする抜かれて200ml(弱)、記念の粗品と脱脂綿もろうて帰途に着く。…筈、だった…
血が、血が、マジで止まらんのですぅ…(号泣)
五分位押さえときゃエエって言ったじゃんかネーチャンよう!押さえて押さえて押さえて押さえて押さえ(←五月蝿い)、とにかくヒッシで止血を図るのだがドウにもならん。ううう、日頃の不節制がたたったか、一向に出血収まる気配無し。「ぬう…」ジャ○プばりに唸りつつ、覚えず拳を握っても、今度はその手が痛むと来た。
判っている…これは全て己が咎、芸夢魔道に堕ちた故。
実を申せばそのつまり、とある合宿行った先、宿のゲイムのコーナーにて、サムライどもにフォーリンラヴ、既にその時、その時分にはただのサルと化していたのである。
一日に、三千以上スッちまうのは当り前、札が手元に入り次第、速攻両替百円ジャラジャラ。もはや財布を開ける手間すら惜しく、ポケットに直に銭子を放り込む程に全きジャンキーと化していた。
それで済むならまだしもが、阿呆のエテ吉何処までも愚者、レバーの握りが誤りで、丁度シューティング用レバーの如くに扱うから…たった一日で親指の、鬼の厚皮もろくもマメに(実話)。飯を喰うにも茶碗が持てぬ、(違う意味での)ゲーバカここに正しく極まれり。
いや、違う!俺は無実だア!あの魔性の黒髪が、あの投げポウズが、ポニィィィィテェェェィル(え)が俺を惑わすんだあ!自慢じゃねーけど、これでも以前はポニィィィテェェェィルの同好会を主催した事もあるんだア!(←それは隠した方が…)くうう、ポニィは世界最強の凶器だア!ビバ!ポニィ!ポニィのためなら死ねる!我、ポニィとともに死す!…例えそいつがアル中のムキムキ浮浪者であっても…(死)
…それはさて置き閑話休題。先週も先週で体調を崩し、キングオブハライターズ(略称キンハラ)と化して苦しみ悶えていたのだが、今日は今日とていと哀れ、アイタタアイタタアイタタタ、キングオブアイタターズ(同キンアイ)状態と相成った。
あああ、この後午後は暫く講義は無いけれど、血が止まらんと困るニョロ!焦燥のままに片腕まくって傷押さえつつ、童謡もとい動揺のママに学食近辺をぐるりら、ぐるりら。
その情けなさ爆烈!な哀れな脳裏に、ピカーッと閃く閃光あり(←またかよ)
「メメクラゲに刺されたのです」
悦…
ちょっと待て(汗)、勝手に変な世界へ行くなあ!と自分でも咄嗟に突っ込みを入れるのだが、時既に遅く。バカの脳裏にはつげ義春の世界が燦然と広がって行く(滝汗)。
イヤでも確かにそうだな、この虚ろな眼(…)で途方に暮れて、ただひたすら傷口を押さえながら彷徨う様はまさに「ねじ式」だよな…などと一人妄想の国で萌えまくっているあたり、もはや病膏肓に入る。ああ、メメクラゲだよな、本当は伏せ字の「××」だったのが写植のミスで「メメ」にナッちまったんだよな…と、もはや精神的逃亡の境地で白昼堂々つげワールドに没入。
つーかオマエ「ねじ式」未読だろ!と、辛うじて正気を保っていた部分が激しくツッこむが、いやだってホラ、あれって超名作だし…等々、脳の妄想野(←ねえって!)が無意味な演算処理を繰り返す。
そして何より恐ろしきは己の心理、血が止まらぬ事態は解決せぬのに、「ねじ式」に己をなぞらえただけ、ただそれだけでホンワアとばかりに頭のお花畑が満開に(…)。
オドレはアホかあッ!!!
ヲタは死んでも阿呆と言う事だ…
後日、流石に血は止まったものの、傷の辺りが痣になる。それがまた、かなり大きく色醜く、見た目も相当アレなため、医の道に詳しい友人に聞く。曰く、
「押さえ過ぎだバカ」
…変に圧をかけ過ぎただけの様です…(涙)
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