※またも遠距離…すみませんです
KC☆Earth(2)
「もしもし!?か…」
海馬くん、思わず反射で言いかけて慌てて口つぐむ、代わりに返って来る声。
『悪い、兄サマじゃなくてオレだぜい』
「…モクバくん…」
同じく、音信不通だった中学生。
…進学してからは行事やクラブ活動など、むしろ学校の日常を優先して来たモクバだが。今回ばかりは相当の事だったらしく、特別に長期の休暇届を出していた。勿論それでも海馬の学生時代に比べれば出席日数だって遥かに上、実質問題は無いだろうけれどモクバ自身は複雑だろう…楽しみにしていた球技大会などイベントを幾つも蹴ってまで、集中せざるを得ない大事業。それを思うと遊戯の心も重くなる。
『その…ごめんな、隠れる様なマネしちまって』
「ううん…」
何でも無い、答えながらも瞬時過る航空写真、塗り潰された不自然な場所…
『悪い!マジでごめん!』
…必死で謝るモクバの声に。
痛みを敢えて飲み込んだ。
…大分慌てていたモクバだが、遊戯の声を聞く内に落ち着いて来たらしく、事の次第を色々と。
『兄サマの無茶なんてさ、そりゃ…今に始まった事じゃあないけどさ』
今回、いささか度が過ぎるらしい。
『色々重なっちまって…ライバル企業どもの横槍も特別酷いんだぜい!』
秘密裏に進めていたプロジェクトに根も葉も無い噂を立てられて、スケジュールがとてつもなく狂ってしまったらしい。
『申請書類とか、ホーリツ的なトコも全部クリアだった筈なのに…白紙に戻っちまって』
『何せもう。丸々一ヵ月以上、遅れちまってるからさあ…』
「…えええ!?」
海馬は。元来がイレギュラーを嫌う性格である、そうで無くても遅れた理由、当人の尽力とまるで離れた不毛の妨害にあるとなればその憤懣も痛い程判る…けれどその怒りがその身を苛んでいるなんて、居ても立ってもいられない。
「ボクに…ボクに出来る事は!?何か手伝える事とか…」
『あ…えーと、その…今回割とケンチク系の話だからさ、トラブッてるのも半分役所とだし…まあ時間さえかければ何とでもなる事でさ』
「そう…なんだ…」
つまりは自分の出る幕では無い…消沈。
『あ!だけどさ遊戯!』
『ちょっとだけ、頼むぜい』
「…え?」
『遊戯にしか、出来ないコトさ!』
『兄サマに言ってくれよ…『待ってるから』ってさあ!』
「え…」
『へへっ、そりゃあ遊戯はさー?いつだって兄サマのコト、ケナゲに待ってるけどさあー?』
「モ、モクバくん!!」
『けどさー、何せさー、兄サマの今回のテンパりのメインの理由がさー…誰かの誕生日に絶対帰国出来なくなったってトコにあるんだぜい?』
「…あ」
「じゃあ…ボクの所為で…!」
『ち、違うぜい!』
「…ごめんなさい…っ!」
『お前のセキニンなんかじゃ無いって!』
『今回…って言うかまあ何時もだけどさ、兄サマ勝手に自分ルールって言うか無茶シナリオ作っちゃって…ってのがそもそもモンダイだしさ』
「だけど!それは…!」
『うん。モチロン、それでこそ兄サマだぜい』
『けど。兄サマも結局、ヨクバリなんだよな〜…』
「欲張り?」
『だってさ、どっちも全然諦めないじゃんか〜』
『プロジェクトも。お前の事も、さ…』
「…!」
果てしない「夢」と、そして…遊戯の事。
自分の目標だけを追うだけでも大変なのに、海馬は遊戯の事を決して忘れない。
それでいながら諦めない、幼い頃からの途方も無い、険しくも眩しいロードを歩み続ける事を…!
(海馬くん…)
…そんな、ひとだから。
「あの…」
素早く頭の中で確認する、今の自分の使えるカード。
…ゲームのバイトで出来た貯金、それに自分用のパスポート。
昔は慣れずにおろおろしていた空港も、今では馴染みのフィールドに。
出張帰りを迎え行くのに随分何度も通ったし、むしろ思い出の優しい場所。
もう。頼らなければいけない自分では無いし…
タイミングばっちりの、良いチケットのサーチ…と言うのは流石にまだ慣れないし、助けて貰う事もあるだろうけど。でも多分、今の自分に唯一出来る、彼の願いを両方叶える一番良い方法は…
「ボクが…そっちに行っちゃうって言うのは…?」
『あー…それはやっぱダメだぜい』
…あっさり却下。
「だけど…!」
『無理させたく無い、とかじゃ無いんだぜい?』
…やんわり訂正。
『けどさ。何て言うか…譲れない一線ってのがあるじゃん?』
『プレゼント、兄サマに…じゃなくて、兄サマ『が』したいんだぜい?』
『兄サマ。自分『で』、贈りたいって…それがもう、兄サマの願いなんだぜい…?』
『…だからさ。ある意味、お前には結構、ヤな事だけどさ…頼むぜい』
「嫌なことなんて、そんな…」
『…って言うか、むしろ辛いよなあ…』
「モクバくん…」
『けど!だからこそ、オレが頭下げてるんだ!』
「モ、モクバくん!?」
『このとーりだぜい!あんなバッチリな台詞、言える奴も納得させられる奴も、他にいないからな!』
「う…」
あんな台詞…改めて思い返す赤くなる、今まで意識もしていなかったけど。
頬が熱い、血がどんどん昇ってしまう…そんな気配を悟られた様な、ニヤニヤ声。
『頼んだぞ〜、遊戯!』
「う、うん…」
『トクシュニンム、期待してるぜい!』
「と…!?」
じゃあな〜!…朗らかな声を残して通話は終了、遊戯の頬はまだ赤いまま。
はあ…最近悪戯が増して来た、何せ多感な思春期中学生、近頃こんな会話ばかり。
だけど。言葉の裏は変わらず真直ぐ、出来る限りを精一杯、一生懸命なのは変わらない。
小さな身体に似合わない、ジュラルミンケースを運んでいた、あの頃から…
「ボクも…負けてなんか、いられないや!」
何も出来ずに待ってるだけじゃ、苦しいけれど。
それで痛みを少しでも、除く事が出来るなら。そして夢に近付けるなら。
自分自身の出来る事、幾らだって頑張れる…
…けれど。
事態は遊戯が思うより、遥かに逼迫していたのだ。
>>3へ
すみませんすみません先日の社長企画と被りまくりです…orz
でも!今回はシリアスモードはそんな長くは続かないので。それだけは御安心を…!
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