※恐ろしく間が空いてしまって申し訳ありません…このシリーズは本来2007年度表ちゃんお誕生日企画の一環でした…(涙)
※元々諸事情で当日には祝えなくて遅れてしまって…と言うネタなんですが、それにしても遅れ過ぎだろうと(泣)
※取り合えず、例によって例の如く、KCが有象無象の攻撃に晒されて、火消しに躍起になった社長は表ちゃんと逢う時間も取れずにかなり追い詰められた状態になって、でも表ちゃんの頑張りで色々上向いて来る、そんな物語です(←説明になっとらんわ…)

※要は表ちゃんへの誕生日プレゼントが絶対間に合わない事態になって限界状態の社長のため、普通の言葉じゃ足りないと考えた末に表ちゃん、遅れてもいいから!とワザと無理難題を突き付けて、社長を元気づける所か発奮させてしまい、『無理難題に応えてやる だがタダとは言わん』とのメッセージとともに送られて来た、新たなゲーム『KC Earth』を解く事になったと。
※ちなみに『KC Earth』はデュエルと探索ものを融合させたゲームで、各ステージをクリアする毎に未公開の新ランド内の建造物がソリッドビジョンで少しづつ見られる様になる…と言う趣向、ただしポリゴン数を抑えたワイヤーフレーム表示なのが色々とミソだったり…(謎)


KC☆Earth(7)


「わあ…!」
 既に馴染みのクリア時演出、まっさらなキャンバスに加わる新たな地図、そして再生されるソリッドビジョン。広大な仮想の地図の上、既に種々の建造物林立する中を縫う様に、青い炎が駆けて行き…追ってワイヤーフレームの骨組みが。剥き出しの、しかし機能美溢れる鉄骨と思しき土台が大きなカーブを描いて組まれて行き、さらにその上流れる様にレールまで…そして勿論と言うべきか、敷地の各所を巡るレールにはブルーアイズを見事に模した車体まで…!
「ブルーアイズコースター…凄いや世界の記録きっと抜いてるよ!!」
 招待状が届いてもう何度目か…遊戯は興奮気味で叫んでいた。



 …あれから既に十日ばかり、KC Earthの仮想マップはもう九割方埋まっていた。
 最初の内こそ四角四面な直方体、ワイヤーフレームで再現するには少々地味な印象の物だったが次第次第にバリエーション、外観だけでもあっと驚く夢のある、モンスターを象った巨大アトラクションと思しき物が幾つも幾つも…中でも一際異彩を放つのはやはりブルーアイズの見事な造型!最小限のフレームのみで表現されても尚美麗、むしろ繊細な針金細工を見ている様な感動さえ…
「すごいすごい!」
 …少しづつ、楽しい事だからこそ少しづつと思いながらも果たせない、だってあんまり浮き浮きして。眼の前のビジョンは小さな小さな卓上サイズ、本物の偉容とは比べるべくも無いだろうけれど…それでもきらきら夢の国。俯瞰する様に隅々まで、居ながらにして…それにステージクリア毎に少しづつ、組み上がるワイヤーの描画の様が本当に、工事の進む様を見ている様で…その全てが嬉しくて。
「それに…」
 胸騒がすは派手な建築ばかりでは無い、たとえ四角な壁が無言でたたずむと言えどその全てに意味がある、建物同士の間の不自然な空間、其処から次なるアトラクションを推理するのもまた楽しく…
「うう…こんなの、我慢なんて出来無いよぉ…」
 …自制出来たのは最初の晩ばかり、結局一晩の内に続けざまに幾つもの場所をクリアしてしまう。だって一つのステージで一つのアトラクション、それだけでもうずうずしてしまうのに。このゲームと来たら何とも悪辣、言わば手段に過ぎないカード集めのミッションですら、仕掛け満載楽しさ一杯過ぎるから…
 『失われたカードを探す』…それが最初の課題だったけれども他にも選り取りみどりの挑戦状、しかも必ず仮想プレイヤーとの対戦が付いて来て。真の探索ゲームの言わばオープニングに過ぎないながらも良く練られた強敵揃い、各々のデッキテーマに沿う形でプレイングにも個性があり、デュエルだけでも夢中になってしまう…!

「こんなの…贅沢過ぎるよぉ…!」

 …キーカードを集めて行けば組み上がり行く夢幻の世界、観覧車にコースターに本物さながらのジャングルクルーズ、巨大アトラクションはもう一通り。それにKC得意の室内型、バーチャルタイプの設備も幾つも幾つも、さらにやけに四角で窓も多い建造物は恐らくたっぷり施設を楽しめる心遣い、敷地に一体化した純正ホテル…見えるのは外装ばかりだけれどもブルーアイズの巨大オブジュの見事さに期待思わず膨らんでしまう、建物の中の演出はきっともっと凄い筈…!

『タダとは言わん』
…言わばプレゼントの『条件』として課せられたゲームだけれどもそんな事、あまりの楽しさに何処か遠く。今や、クリア後の事よりも何よりも眼の前のソリッドビジョンマップに心本気で奪われて。
 この先に待ち受ける事も忘れて…ただ、ひたすら。憑かれた様に残りステージ次々クリアし続けていた。





「…ふう」
 ちょっと…溜め息。

 …疲れた訳では無い、飽きた訳でも勿論無い。ただ、最早残すところ残り一ケ所となってしまったのが惜しいだけ。謎を解くのは本当に楽しい、ステージクリアは高揚する…だけど終わってしまうのは寂しくて。とは言え今は普通のゲームでは無い、進めば見える地図の中、極秘開発真っ最中の新たなKCの巨大アミューズメントを逸早く眼にする事が出来るご褒美付き、躊躇いもそうそう長くは続かない。
「だって…海馬くんの夢、なんだもの…」
 大切なひとの大切なもの、あの澄んだ青が真直ぐ見つめた先…その視界の一端なりとも共有したい、それもまた切なる願い。

 …我が儘だとは判っている、完成の暁にはきっと見せて貰えるのだから。
 でも。一分一秒でも早く見てみたい、誰よりも好きなひとだから、もっと知りたくなってしまって。
 それに…酷くショックだったから、あの時地図サービスで見た光景が。

 塗り潰された…地図。
 僅かに輪郭判別出来るのみ、活き活きした写真表示のその中で、のっぺりまるで其処だけ命が無い様な。それは不安、幾ら心で信じていても眼の前にちらつく拒絶の二文字、揺らぐ自分が苦しくて…
 …だから。尚の事、微に入り際を穿つ仮想マップが嬉しくて嬉しくて、ぐるぐるあちこちせわしなく。さらに仮想の建物が増え行く様が楽しくて、自分も参加している様な錯覚すら…!
「うう…やっぱり…進めたいよぉ…」
 これはゲーム、そう言い聞かせてもバーチャルアトラクションが次々追加される様、建設に携わっている様で。尚更早く先へと望んでしまう。しかも最後に残った空間は随分な広さがあったから…ちょっと見た所では何に使うかなんて想像も出来なくて。逸る気持ちが惜しむ思いをどんどん脇へと押し退けて、結局はスタート、最後の扉を開いてしまう…





「…………あれ?」





 最後のプレイヤーは少し変わっていた、難易度で言えば流石ラストステージと言うべき凄腕だが、しかし重苦しさは少しも無い。スピーディーな展開、ためらいの無いバトル、ともすれば釣られて同じく次々切り札投入しそうになるのをぐっと堪えてじっくり観察、けれど次々現れるモンスターの華やかさには眼を奪われがち…皆、天空を自由に舞う翼ある者達で!
 …クエスト対象のカードもまた、今までとは少し変わっていて。大雑把な所はすぐにでも判る仕様になっていたけれどもそれこそがトラップ、探索ステージには思わせ振りにそれらしきカードが幾つも幾つも眠っていて。数ある中から最高の候補、それを見い出す難易度は計り知れず…悩みに悩んで遂に最後の一枚を得られた時には思わず大きな安堵の息ひとつ。
「それにしても…」
 今一度…あと一息まで迫ったバーチャルマップへと眼を移す。

 …広大な敷地に揃うのは凡そ子どもが夢見る全てのもの、遊具と言うより憧れの結晶の。ゴールが間近に迫るに連れてワイヤーフレームながら徐々に本来の動きすら、スケープゴートのメリーゴーランドはふわふわゆったりくるくると、ブルーアイズコースターは起伏に富んだコースの上を眼にも留まらぬスピードで…けれど徒(いたずら)に恐怖を煽るで無くて速度にも適度な緩急が、それに何より夢の国をぐるりと回るコース設定、それはきっとスリル満点の夢世界巡りのツアーのよう…最早シミュレーションの枠を遥かに超えたわくわく感。
 けれど。ほんの少し首傾げてしまう…コースターの他にも観覧車、遊園地に必須の物はもうたっぷり、おまけに夢気分のまま泊れるホテルまで…バリエーション豊かながら建造物の全てにさり気ない統一感、いっそ完結している様にも見えるのに。この上、一体全体どんな贅沢だろう…
「うう、サレンダーかも…」
 結局…見たい気持ちが勝ってしまう、そっと最後のキーをセレクトして。マップの最後の空白を…





「………!!!」




 一瞬、声すら出なかった…それは全くの予想外、思いもせでいた不意打ちで。
 しかし決して派手な建造物の類では無い、むしろ完結された物語を壊さぬよう、配された建物はごくごくシンプル、機能美の域を守った静かな物…しかし真価はその谷間にこそ。
 地面…よく舗装されたその場所にはしかし見事な輪郭が。典雅に築かれた曲線が地上を見事に飾っている、背丈の高い建物などまるで無くても尚雄弁、むしろ最小限の3D表示が却って神話を明瞭にする…形作るは強大なる龍、ブルーアイズの鮮明なる姿…!
「これ…って…?」
 …もしかして。頭を素早くフル回転、まさかと思いつつも編み出した答え、それを肯定するかの如く…補足ワイヤーフレームが次々と。

「わあ…やっぱりだよ!」

 長大なブルーアイズコースの上を粛々と、進み行くは巨大な翼…紛う事無きジャンボ機で。つまりはこれは飛行場、空路はるばるやって来た遠い旅人がふと見下ろした時、それはどんなに胸躍る眺めだろう…!
「すごい…凄いや…!」
 眼を閉じる…瞼に浮かぶは鮮明な、想いの中のランドの姿。夜の雲間を抜け行くと其処にはきっと無数のダイヤモンド、翼を導く常夜灯…きらきら輝く天体の様、浮かぶ星座はブルーアイズ、なんて素敵なオープニング!!


「…はあ…」
 描く幻想華やかなだけに我に返れば溜め息が、見事過ぎるバーチャルだけれどもやはり卓上サイズ、訪れる事は不可能で。
「うう、眼の毒だよう…」
 実際煽る様に賑やかなソリッドビジョン、コースターは一層スピードを増しているし飛行場には発着する機体の姿すら…!


「…もう!ダメダメ!」


 振払おうとしても煌めくビジョンが離れない、諦めて今一度見直せば。件の華やか過ぎる龍の滑走路のすぐ傍に少し小振りの丸い場所、位置から言って飛行場の範囲の中、円形と言うのが不思議ではあるけれどヘリポートにしては随分大きく…首傾げながら見てしまう。
「でも…これ位が丁度良いのかも」
 …巨大ブルーアイズに歓迎されるのはやっぱり緊張してしまう、だから遠目に見るだけで。
 自分が行くならその隣、この小振りサイズの場所がいい、だってそうでも無いとちょっと無理、足を踏み入れる前から胸一杯になってしまうから…


「…ふう…」


 深い溜め息…けれど。
 KCモバイルのコール音が聞こえたのはまさにその瞬間、まるで狙い澄ました様だった。


 >>8へ続く…


 ブルーアイズコースターはもっとちゃんと描写したかったです…前に記憶の部屋空 1でちらっと書きましたけど、絶叫系じゃ無くて純粋にアミューズメント、むしろ景色眺める余裕もある位のじっくり楽しめる系って言う特殊なコンセプトのなので。ランド内をほぼ一周する構造なので、観覧車とはまた違った視点で全てを一望出来ると言う…  …いやもうコースターに限らず序盤のストーリー長引かせ過ぎた所為で色々削る羽目になってションボリング。カード探しもステージ毎にコンセプト違って全然別のゲームみたいに楽しめると言う趣向だったのに…(TT)  


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