ねことうさぎ (5)


「はぁ、はぁ、はぁ…」
 いつもより大分遅くなったけど。あたしはいつもの場所へと駆けて行く。
「もう…帰っちゃったかなあ…」
 ちょっとばかり不安になるけど、それも杞憂だって判ってる。
 だって。ほら…

「あ!…お〜い!」
 あたしは大きく腕を振る。
 すると。
 ちょっと不安そうにうつむいてたあの子が…ぱっと顔を上げてこっちを見た。

「まあ…!」



 ちょっと罪悪感もあったんだけど、とにかく嬉しくて。
 あたし、さっきまでの事…全部洗いざらい喋ってた。
 ウサ姫、途中凄く眼を丸くして…でも最後にはとても嬉しそうに笑ってくれた。
「ね、ほんとにありがとね!あれが無かったら…絶対危なかった!」
「そう…でも本当に…良かった…」
 どう言う訳か、その子の声が少し詰まった。

「え?どったの?」
「う、ううん…いいのよ」
 ウサ姫はこっちを向いてにっこり笑った。それはいつも通りの奇麗な笑顔だったけど…
 何だろう、何か違う…無理、してる?

「あの、わたくし…」
 とんでも無く珍しい事に、ウサ姫が視線をふらふら彷徨わせた。
 まるで迷うみたいに。

 逡巡、逡巡…

 ちょっと不自然な間があって。
 やがてその子が、何かの包みを取り出した。


「あの…もう、アグライアの護りも無いのでしょう…?」
 差し出されたもの。前より少し小さいけど…でも、それって…!
 あたしは凄く慌てた。
「だっ…駄目だってば!そんなそんな、幾らなんでも…」
 そりゃ、姫には大した事ない額かも知れないけど…

 って。
 え…!?


 「それ」を差し出す姫の手が。
 凄く…痛々しく、震えてる…?


 あたし。
 思わずウサ姫をまじまじと見返しちゃって。
 そしたら姫…はっとした様に眼を伏せた。

「あの…どうか、お願いだから受け取って頂戴!」
 あたしに。押し付けるみたいに…
 超レアな、特別高価な…アグライアゴールドの金貨の包み。
 それも、こないだより…減ってて。

 もうぎりぎりの量で。

 あたし。
 ここが嘘の世界だって事、すっかり忘れてた。
 そうだよ、ここは全部嘘なんだから。
 あたし、ずっとこの子…本当のお姫様なんだと思ってて、それで。
 …あの子がどんなにして、あの金貨を集めたか、なんて。
 ちっとも考え無かった…

「…お願い…」

 あの子は。ますます震えてる。

 あんなにぽん!とプレゼントしてくれたのも、みんなみんな嘘を固めて完璧にするためで。
 今まで積み上げて来た…服とか仕草とか話し方とか、そう言うものをさらに補完するためで。
 逆に。
 その一つでも壊れちゃったら………?

 もう、ここまで来ちゃったから。
 あたしに出来る事と言えば。
 何も気付かない振りをして…

「あの…ありが、とう…」

 …受け取る事、だけ…


 あたしが高過ぎる、それも多分最後の贈り物を。自分の膝に置いた時。
 あの子は心底ほっとした顔をして…今度こそ演技でも何でも無く、本気の安堵の顔をして…

 あたしは。
 凄く、つらい。


 …考えて見れば当然だよ。
 たとえばさ、本当の「御令嬢」とかってのは…ふわふわした服なんてまず着ない。
 そりゃ、フェミニン好みの奴だっているだろーけど…あくまで「フェミニン」どまりで。
 こんな…本当のおとぎの国のお姫様以外絶対着ちゃいけない、こんなオーガンジー尽くしの服なんか着やしない。着られっこない。
 だってさ、「御令嬢」ってのは最初から「御令嬢」だから。努力なんてこれっぽっちもしなくたって、凄く腹立たしい程「御令嬢」なんだから。
 それに今どき、如何にも高価そうな服とか過剰装飾なんて流行らない。
 なんでこんなつるんとした服に…ってカンジのに100単位で使っちゃうってのがつまりはおシャレで。

 ずっと前に、コクエー放送のニンゲン大学か何かでやってたな。
 なんか、油の抜け切ったバーさん講師が現われて、こう言っちゃナンだけど、その顔で話す事ってのが…「少女小説の世界」。勿論アレ、高畠華宵とかの時代。あのカンペキな世界の話…それをバーさんがァ?はっきり言って、「はァ?」ってカンジ。
 でもさ。そのバーさんは大した奴だった。
 リボンとフリルと、夢みたいな色調の世界を淡々と語った後で。しっかりカメラ眼線でこう言った。

「この幻想を支えていた彼女達は、リボンもフリルも無い厳しい貧困に身をおいていました」
「身近に夢の様な世界があった訳ではありません、無かったから希求して自ら競って作り上げたのです」

 すっげ、淡々と。
 でも。
 だから…あたしは自分を恥じた。

 リボンとか、フリルとか。妖精の贈り物みたいなレースとか、舶来品の日傘とか。瀟洒な洋館とか…
 みんな、嘘。全部、嘘。
 でも。
 だからこそ…

 切実な、嘘。

 人魚姫が一歩足を進める度に、切り裂かれるみたいな凄い激しい痛みが走って。
 それでも…人魚姫のダンスに、居並ぶ客達が賞賛の声を惜しまなかった様に…

 どこまでも甘い、完璧な嘘は。
 いつだって、瀬戸際の輝きで。


 何で人生枯れたバーさんにも判って。
 あたし、気付かずにいたんだろう…?
 ならいっそ、ずっと騙されていれば良かったのに…



「ねえ?」
 あの子が柔らかい声をかけて来る。
 それはとっても奇麗な…鈴を転がす様な声だけど。
 今のあたしには、人魚姫のダンスみたいに聞こえてしまう…
「ねえ、アグライアはとても優しい輝きだから…おめめに刺さったりしないのよ?」
 ふふふ…小さな笑い声まで付けて。

(…!)

 その何気ない一言に。
 あたしは。
 稲妻を受けたみたいだった


 知ってた筈だよ…あたしは。

 『おめめに何か刺さった』

 新美南吉。てぶくろを買いに。童話の中の童話、優しい優しい…あったかなおとぎ話。
 でも。
 てぶくろを買い行ったこぎつねは、ちゃんと帰ってこれたけど…お母さんは最後まで言ってた。
 『にんげんは、そんなにいいものかしら?』って。
 それに。

 ねえ、ごんぎつねは?
 …チロヌップの、きつね達は?
 第一…


 新美南吉、本人は?


 『ごんぎつねってさあ、アレは何度読んでも泣けるよね〜』
 泣ける話?…冗談じゃない!
 あんなバカな話があるか!あんな…あんな!
 誰も彼もが傷を残して!もう二度と取り返しが付かないんだ!
 青い煙が、青い煙が、青い煙が…嫌だッ!

 大体…書いた奴が結核で死ぬなんて!あんなに若くに死ぬなんて!!
 どうして…!

 でも。
 世間ってものは。
 そんな事まで…貪欲に飲み込んで。あっさり消費して。
 人魚姫の足の激痛なんて頓着せず、ただただ都合良く上澄みだけを楽しんで…
 そう言うの、あたしは絶対大っ嫌い…
 だったのに。


 あたし。
 あの子の奇麗でふわふわした所…
 都合良く解釈してたんだ。

 完璧なお姫様、そう完全に完璧。一分の隙も無い、正真正銘の完璧。
 だけど。
 人間ってのは、生まれて死ぬまで、一瞬だって完璧になんかなれっこない…

 あの子は。
 あの子の膝に広げたハンカチーフは。
 完璧で無い自分が…小説じみた事をするのが許せなくて、ただそれだけで。
 そう、ただの詰まらない弱い人間みたいな自分が許せなくて。
 それで…なんだ。

 ドレス。
 上から下まで、苦労したに決まってる、自作デザインとかレア品だとか。
 それに無駄に馬鹿高い、会費に通信費。
 おまけにあの神聖騎士団まで動かしてみせる…真正のアグライア金貨。
 全部、全部…

 あの赤い染みのため。

 …そんなに追い詰められてたのッ!!


 あたし。
 この何日か…凄くほんとに楽しかった。
 生まれて初めて位に幸せだった。
 なのに。
 そのすぐ傍で…
 あなたはずっと、血を流してた。

 そこまで虚構を抱えなきゃ、駄目な位に追い詰められてたの?
 嘘、嘘、嘘…
 誰か、嘘だと言ってよ!


「…はい」
 そっとかけられた声に顔を上げれば。
 あの子が、真新しい奇麗なハンカチーフ、あたしに向かって差し出してた。
 そう、あたし…知らない内に泣いてたんだ。

 でも。ああ…どうして。
 どこまでもそんなに完璧に…お姫様なの?
 そしてどうしてここにいるの?

 こんなに優しくて奇麗なあなたに、リアルの世界の居場所は無いの?

 借りたハンカチーフは柔らかくて。ますます涙、止まらない。
 ああ、凄く思う。
 人に自慢が出来る様な、不幸な物語りが一つも無いなんて。別に大した不幸じゃ無い。
 そして。この子のリアルを思い浮かべて…何か胸につかえてた物みたいのが取れるのを感じて。
 そんな自分が堪らなく嫌だった…

 一人だけ楽になって行く自分が。
 どうしようも無く許せなかった…



 いつもの場所の、いつもの石段。
 そこには…覚悟はしてたけど…だあれもいなかった。
 ただ。
 遠目に見える…あの風に飛ばされそうなものは何?

 慌てて駆け寄ると、そこにあったのは。


 重し代わりに置かれた、見慣れたミスリルのナイフと。
 あの…奇麗な奇麗なハンカチーフ。
 その畳み方を見て。
 あたしは思わずくすって笑った。

 あのレースで縁取りされたお姫様な布が。
 どう言う訳か…シャツのカタチに折ってある。

 ああ、あたし思い出した。
 ずっと昔、凄く昔。
 ノートの切れっ端なんかに手紙を書いて、それをこうやって折って。
 で、教室中に回したっけ。
 手紙って言っても大した事じゃ無い、一、二行の超短信。

 じきに。
 メールとかに、変わって行ったけど…


 そだ。
 メアドどころか、あたし達…名前も全然知らなかったんだね。
 でも。
 これで充分。

 どんな長い手紙だって、これよりうまくは伝えやしない。

 だってね、この…「シャツ」。
 折り方迷ったのか、変な皺が一杯付いてて。
 それが何だかとっても嬉しい。
 何より、半袖シャツのカタチが嬉しい。


 あの子。
 ちゃんと帰ったんだね…



 石段にぺたんと腰掛けて、見上げた空は晴天快晴。
 どうしよっかなあ、家帰って寝ようかなあ…
 アハッ、何だかちょっとおかしい。
 あたしが、家に帰ろう…だなんて。

 でも。リアルも満更悪く無い。
 だって。
 あの子と同じ空の下、一緒の空気吸えるんだよ?
 そりゃ、道でばったり会ったって、きっとお互い判んないだろーけど。
 リアルのあたしはネコじゃ無いし…あの子だって、ウサギじゃ無い。

 あたし達は。腹立つ位に…リアルな人間で。

 でも、それでも。
 会いたい人が何処かにいるのって…

 何か、とってもいいじゃない?


Fin.


後記:
 取り合えず、「Fortune World」第二段ッス。ゲーム設定とかはぼうけんのかえりみちを御参照の事。
 …とは言え。
 非常に本性に正直と言う事は別として、まあ普通に読めなくも無い前作に比べてだから結局何が言いたいんや!と首根っこ掴んで問いただしたいシロモノですが。
 う〜ん、強いてテーマを上げるならば…真のゴスロリを教えてやる!って辺りですか(をい)

 …そりゃ、「え?この話のドコが?」ってツッコミも当然ですが。特にネコは一見シンプルなデザインですし…けど、ネコのキャラクターも含めて表面的なモノでは無く、深層のエッセンスを抽出したつもりでヤンス〜!

 近代とはファッションの時代だ…と言うた人がいてますが。逆を言えば昔はどんな衣装にもそれなりの「意味」と言うか「意義」があったのです。そりゃ昔にも流行はありましたが、洋の東西を問わず…服装は常に特定の階層や職業、そして集団に結び付き、だからこそ「禁色」と言ったタブーが存在し得たのですな。
 それを解放し、服装を純粋に楽しむべきモノに変えた…あるいは変わっていったのが近代と言う時代だと。
 んで。
 その全てを「ファッション」としてただただ浪費していた筈の現代で、種々の形で「特定の職業、集団」と分かち難く結び付いた「コスチューム」が再び脚光を浴びています。それは結局人間の弱さ…つまりは共通の意味など皆無のモノから己の感性のみを頼りに自由選択すると言う、なかなかエネルギーのいる作業に疲れたためかも知れませんし。何より新たな消費と言うか、元々服装が備えていた「意義」の搾取の新たなカタチに過ぎない気もしますがね。
 でも。
 服装がかつて共通の「意味」を持っていた…つまりそれなりの文法体系を有した疑似言語と言える存在だったと言う事から。もちっと別の事が見えやしませんかね?

 ゴスロリってのは表面上は割とアンティークな時代の欧州をなぞっていますが。ほとんどの場合、その衣装は歴史的に実在した時代の「文法」から外れています。そして何より日本の風土にちっともマッチしてまへん。だから極めて奇異ではあります。
 しかし。
 同時に単なる模倣では無く、結構奥の深い部分があります。

 コミックやアニメで「ゴスロリ風ファッション」は頻繁に登場します。たいてい色は黒、レースとヒダヒダが多くて、そして当然膝丈スカート。ついでにちょっぴりボンテージの要素なんかが組み込まれたりしてて。
 うん、そんなに間違ってはおらへんね。
 けどな。
 それだけやとちと違う。

 まず、妙な話…黒ばかりがゴスロリや無い。
 白を基調としたものや、意外な所で真っ青なんかも結構あるです。あとピンクとか、赤系チェック柄とか(!)
 つまりレースを付けりゃあイイってモンでも無い。
 そのゴスロリの魂があればレースを一切廃してもやはりゴスロリで。
 逆に。レースバリバリ、フリフリ爆発な衣装でも…イベント会場で単なるお祭りコスプレ気分やったらそれは真正のゴスロリとは言えん!
 …いや、当方真のゴスロリストでは無いので「なんちゃってゴスロリ」も好きなんですが…すんません(−−;)

 じゃあ。
 「魂」って何や?…と、なりますが。
 ま、いちおーこのハナシでそれをちょっぴし書いてみた訳です。
 う〜ん、かなり説明不足だのう…



 …んで。
 ここまでえっちらおっちら読んで下さった方にのみ、本音。
 何でまた、メインフィールドで無いゴスロリを書いたかと言うと。それも、一見してそんなにゴスロリっぽく見えない話を書いたかと言うと…

 おこがましい事ですが、ゴスロリとそうで無い人々の間に橋を渡したかったから。

 …一本丸木橋のよな、イマイチな橋ですが(涙)


 この話を書こうとしたきっかけは、特に先月報道がヒートアップしていたある「事件」です。12月に入って、恐ろしい事にあの事件すら風化される程の「現実」が相次いで…今は比較的沈静化していますが、コメンテーターの何処か得意気な「わっかんねー!ひとつもわかんない!」と言う言葉に正直ブッチしまして。

 無論、殺人はひとっかけらも容認しません。弁護もしません。
 ただ、叫びたい事があります。

 うるせえよ!黙れよ!
 子どもに「何で人を殺してはいけないの?」って聞かれて答えられないよーなヤツが…何鼻の穴膨らませてんだよ!
 お前ら何で言えねーんだ!
 死の五分前にお花畑なんてちょっともねえ、あるのは地獄だけだって…何で言えねーんだ!
「人を殺してはいかん!絶対にいかん!…理由?ばっかもん!自分で考えろ!」
 何でお前ら、そのいっちゃん大事なコトバがきちっと言えねーんだよ!
「なんか…そう聞かれても、ねえ…ハハハ」
 何うすら笑ってンだよ!
 それで「ワカラナイ」って勝手に安全圏逃げるのかよ!


 …自分は服装こそ地味で、外見上何ら共通点を持ちませんが。精神的には幾らか同じ部分があります。
 あれは現代ファッションの文法で見ても、古い時代に実在した衣装の約束事と照らし合わせて見ても…間違いが散見はされます。が、仲間同士で見ればそれは確かな共通言語たりえています。

 近代的な、コンクリの町であの格好をして。浮くのは当然皆判っています。
 それでも続けるのです。
 そこには一種の「業」があります。

 その「業」を見ずして、あの世界を語る事はできません。

 勿論、あれは代償の大きいだけの「逃避」とも取れます。
 それはそうでしょう、行為の価値は代償の大小だけで決まる訳ではありません。
 代償、努力…その多寡だけで行為や人間の価値が決定されるなら。極論すればストーカーだって最高の人間になってしまいます。
 どんなに逃げていても、現実は追って来ます。
 それでもひたすら逃げようとしたら…

 出来れば。
 ちゃんと帰って来て欲しい。


 「大人はわかってくれない」ってのは昔から変わらない子どものわがままです。
 「この腐った世界に自分だけ」ってのも思春期がほとんど必ず経験する思いです。
 はっきり言うて、自分もう十二分にキッタねー大人化してるモンで、オンドリャ自分らだけ被害者の面ァしおって…ワシら大人を判ってンのか!って喝ってやりたいです。
 それでも何とか判ろうとする…いや判らないでもいいけど!どーせ互いに他人の事なんて絶対判りゃしねーけど!
 でも。道を完全に閉ざすのは、大人のやるべき事じゃあ無いでしょう。

 ただのファッションじゃ無い、叫びなんだ…そう思う事位、いいじゃないスか。

 あの子達は身内で(非常にバーチャルな、錯覚に近い部分があるとしても)自分達だけの「言語」による、意思の疎通がとてもスムーズに出来るので。他の言語を放棄し、結局それが周りの無理解を深める悪循環にもつながっています。
 そして異常な程の潔癖な側面やよく反感を持って語られる「選民意識」的な態度の数々も。単に世界に絶望したからでは無く、何処かで自分に絶望した事に端を発する事が多いのです。

 我々の住む世界は決してベストな世界ではありません。評論家の言を待たずとも、自分と周囲、それにニュース見てれば充分です。
 それでもあの子達も。どうあがいてもこっちの世界に籍をおいてる訳ですから、少しでも暮らしやすく…こちらと共通の言語と、何より自分自身をドロドロした部分も含めて受け入れて欲しいなあ、と。
 それも結局は安全圏の人間の都合に過ぎませんがね。


 まとまりが無いついでに、ダメ押しでもうひとつ。
 実はこのトークで嘘付いてまして。
 …この話を書こうと思った本当のきっかけは、あの「事件」で報道されたサイトに対する感想を見かけたからで。
 別にその人だけを個人攻撃する訳じゃあ無いですが、「怖いもの見たさ」ってなあ…
 闇なんて誰の中にもあるってばよ。わざわざ出かけて見るモンじゃなし。
 それを「怖いもの見たさ」か…まあ、闇の少ない人もいてますし、気付かず生きるのは人生の知恵として健全やし。そっちのが幸福やし。

 自分はテメェで間に合ってるモンで、別に見る気はありません。

 そして「全部嘘」って言葉も、かなりの部分真実だと。

 本当の真実は、語れる筈、無し。

 それから…ネット上だと確かに饒舌になる人が多く、「本音」っぽいトークを日記の類で見かけますが。それでも必ず巧妙に隠してある部分があります。なのに、何故か「日記」となると全て真実と錯覚する人が多いのはどーしてなんでしょう。
 ま、結局テキストベースってのはありますね。自分、実に悪い奴で…かつて、とある掲示板に生息していた時。ハンドル五つ位とっかえひっかえで書き込みしてまして。勿論、名前ごとに文体も話題も意識的に変えまして。でとは言えどーせサーバー名でバレバレですし、一応常連さんにはソレと判る様にちょっとした符牒を仕込んであったのですが…

 かなり常連に近い人々まで、随分騙してしまった様で。

 ちょっと話が逸れますが。
 ハンドル名もですが、文体の変化で完全に印象変わってしまう様です。まあ、そりゃそーだと思いますが…
 自分が一番悪い訳ですし、何よりこっちに実害は何も無かったのですが。相手のほとんどは若いとは言え20代、ちょっと注意して見れば判るのに…と少々薄ら寒い思いをしたのも事実。
 特に驚いたのが、別の女性で名前が男名で一人称が「オレ」の方が一部で思いっ切り男性だと思い込まれていた事。ハンドルが男性名とは言え明らかに女性に人気の声優をもじったものである事、それに男性が初対面から「オレ」と自称する事はあまり無いと言うにも関わらず…そして何より、話の内容が如何にも女性であったにも関わらず。名前と一人称、重要には違いありませんが全体からすれば明らかな細部が判断において優先したのです。

 どんなに分厚い本を書こうが、どんなに巨大なサイトを構築しようが。そこに一人の人間を丸ごと閉じ込める事は出来ません。しかもその「部分」ですら、一人の人間が解釈するには手に余るのです。
 結局、人は隠し切れない本音はにじむものの…嘘と自分の一部しか入っていない、そんな不完全な情報しか発信出来ず。そして受け手もまた、そのさらに都合良く切り捨てて、ごく一部しか見ようとしません。

 何より。
 あの、サイトについて言えば…
 どう考えても、あれは本音を語る場所では無く。「こうありたい」「あるいはこう見られたい」と言う目的で設置されたんじゃ…?
 確かにその「欲求」には本音が混じってはいるでしょうし、ドロップアウトした部分も溢れ出してはいるでしょう。でもあれは、一つの…安全圏の人間とは共有しえない…「理想」を構築したのであって、あれを「実像」とか「本気の狂気」と見て大騒ぎしたら。
 自分だったら鼻で笑いますね。

 とは言え。
 ニュース見てて思うのですが。
 家族を持たない…と言うより、カンタンに切り捨てられる奴ってのは本気で怖いなあ、と。
 自分や自分の周りの命が紙より軽い人ってのは、ホンマ殺すも殺されるも平気なんやな…
 (あ、ゲンキューしてるの、ティーンズじゃ無くて還暦過ぎたあるおっちゃんの事です。)

 取り合えず、例のサイト。「怖いもの見たさ」やったら見んで下さい。
 そんな心づもりやったら見んといて下さい!
 …あ、あかんわ、さっき言うてた事とちゃう。

 ほな、こう言お。
 見るんやったら、対峙する覚悟を持ってや!


 とかエラそに言いつつ。
 テメエこそショーセツなんぞ書いてへんで、リアルに対峙しろよと。
 逃避せず、リアルを知り、そしてちょっとでもいいからリアルを回復させる方策を考え実行しろよと自分を責めつつ終了。

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(C)獅子牙龍児
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