骸骨譚


 マギスの国は悪魔の国と人は言う。およそ禁忌と言うものを持たぬ不逞の輩ばかりだと。

(そりゃ、そうだよな…)
 この国に生まれ育ち、良くも悪くもこの国の他は知らぬ少年は一人ごちる。自分が異国に抱く憧憬が隣の芝生は青い…の類とは知ってはいるが。

 この国は何処かおかしい。

 幼き頃より…いや、生まれ落ちたその日より。マギスに取っての異物であった少年は、街を斜めに眺めていた。



 マギスの都は…見慣れてしまえばどうと言う事も無いが、恐らく異国人に取っては極めて異様だろう。馬も無しに、おまけに何より車輪も無しに…空中を滑る様に走って行く魔法動力の『飛車』。尋常ならざる大きさで、そして決まって不吉に黒い…マギス馬。愛玩動物代わりに奇怪な幻獣を引き連れた貴人、眼を疑う様な奇抜な衣装を着込んだ…高位の神官達。
 夜中に油っこい物をたんと食べた後の、寝苦しい夜の悪夢の様だ…
 そう思い舌打ちしつつ街をぶらぶら歩く少年…ジャンも。まだ、この国の本当の不可思議を知らずにいたのだ。


 暫く歩くと、国の主神たる知識神の拝殿がある。正式な神殿は街の外、マギスの名の由来となった火山マグムノの傍にあるのだが…この拝殿もなかなか繁盛しているのだ。まあ街の中、と言う事もあるかも知れないが、如何にも知識神様の拝殿らしく。ここには多数の書物がある上に、信徒にかなり開放されている。おまけにここには小部屋が沢山あって、希望するなら一部屋借りられるのだ…無論、誰にでも、と言う訳では無いのだが。
 しかしジャンにはその資格が充分あったから、実に頻繁に通っていた。別に学問をしたい訳でも無く、個室を一旦借りてしまえば誰にも邪魔されず、中で何をしようが勝手であったから…屋敷に帰りたくないジャン少年は、よくここで一日を過ごしていた。
 そんな事をつらつら思いつつ、拝殿へと近付き…そこでぎょっとなって眼を剥いた。

 拝殿の入り口に、骸骨が二人立っている。…いや、そこに驚いた訳では無い。
 死霊魔術が禁忌どころか単なる便利な技術として重宝がられるこの国にあって、所謂『死に損ない』を従僕代わりに使う事は珍しく無い。流石に食事の世話までさせる事は稀ではあるが、警備の任には良く就かせている。
 『死に損ない』と言っても素人の浅はかな想像と異なり、彼等…いや、『それら』と言うべきか…には所謂『魂』に相当する物が無い。無論、『心』に似たものは備えているが、それも言わば条件づけられた人工的な『思考』と呼ぶべきもので。
 『死に損ない』には生前の魂を全く持たず。つまり実質生きていないから、心変わり…裏切りが無い。
 だから。なかなか重宝がられているのだ。

 …そんな訳で斜(はす)に構えた少年も、骸骨の門番如きで驚きはしなかった。殊にこの拝殿の門番は、一応簡素ながらそれらしい制服を纏っているので…骸骨の恐ろしさが幾らか薄い。それでも今、少年の眼の前に繰り広げられている、この光景は何だ…?

 一人の貧しい身なりの…老婆とおぼしき人物が。『門番』の一人に盛んに話しかけ…
 挙句、感極まったかの如く。溢れる涙を抑えている…?

(き、気でも違ったのかよ?)

 ジャンが驚きのあまり口をぱくぱくしていても、勿論『門番』は素知らぬ顔で任務を続けていて…
 老婆が不意に振り向いて、ジャンの顔を見て…困った様な笑みを浮かべた。



「まあまあ…お恥ずかしい!ご免なさいまし、お坊ちゃま」
 老婆…と言うにはまだまだ早い女性だった。腰が酷く曲がっていたので、後ろ姿でそう決めつけてしまったのだ。
 『お坊ちゃま』と言う呼ばれ方はジャンの最も嫌いとする所だが、『老婆』と見誤った気まずさも手伝って、何より先刻の行動が気になって…つい尋ねてしまう。
「あ、あの…今のは…?」
「ええ、ええ!さぞかし妙に見えたでしょうにねえ…」
 その若くして海老の様な腰を持つその女性は…照れた様に困った様に笑いながらも。
 誇りを込めて語り出す。

「この門番は…息子だったのでございます」


 女性の子どもは、生まれたその時から病弱だった。
 幼い頃から歩くのにも難儀して、走る事なぞほとんど出来ず。それでも何とか歯を食いしばり、それなりに生きて来たのだが…十五を過ぎた程で病の床に着いてしまう。
 良い薬師も手を尽くしたが適わず。己の死を覚悟した少年は…一つだけ、叶えたい夢があると言い出した。

 『立派な誂えを来た、門番になりたい』

 人間の門番では無い、死した後にあの『死に損ない』の門番になりたいと言うのだ。
 そして。それを聞いた薬師が…知己に当たって死の床の夢を叶えさせたのだと言う…


「だ…だけど!」
 真実幸福そうな女性の顔を見れば見る程、頭が混乱する。一体何なのだ、この話は?
「それに…あんたは知らないだろうが…」
 自然に…特別の儀式に依らず死んだ魂を、肉体なり器物なりに定着させるのは極めて難しい。それは皮肉にも、死霊魔術が禁忌で無く酷く軽々しく濫用される過程で判明した事なのだ。だからこのマギスでさえ、『死霊』魔術と言いながらも本当に『死霊』を扱う事は稀である。
 歩く死者を動かしているのは生前の魂では無く…別のもの。
 死者を蘇らせる事は…多大な魔力と偉大なる魔術師が揃っても、まずもって不可能…
「その骨には。あんたの息子は…これっぽっちも残っちゃいないんだ」
 苦い気分で、告げたのだが。
「まあまあ!」
 …女性は朗らかに笑う。

「存じておりますよ、薬師の先生も教えて下さって」
「え…」
「魂までは、残らないそうですねえ」
「じゃあ、何だって!」
「だって」

 晴れやかな笑み。

「だって…あたしの子には、違い無いですもの…」

 そっと。いとおしむ様に…漂白された、白い骨を優しく撫でる。
 その細めた眼には。狂気なぞ欠片も見当たらなかった…

 頭がぐらぐらする。


「でも…でもな!あんた騙されてるかも知れないぞ!」
「…はあ?」
「だってな、その薬師…治せるのにあんたを騙して、」
「まあまあ!あの先生に限ってそんな無体はございませんよ」
 女性はその薬師の名を挙げる。
「お坊ちゃまも、ご存じじゃありませんか?」
「あ、ああ…」
 その人物ならばジャンも良く知っている。何を隠そう、ジャン自身も幾度か世話になっている。…いい加減な『自称』薬師では無くて、魔術も薬草の知識も本物の上に話上手な良い薬師だ。
 あの人物ならば、詐欺で助かる病人を殺す事はまずありえない。
「あの先生なら」
「…でしょう?」
「けど…」
 ジャンは改めて骸骨の『門番』を見る。

 何故。死の床の…自分とさほど変わらぬ年の少年が。
 歩く骸骨になる事を望むのだ?

 しかし女性はジャンの疑問を取り違えたと見える。
「ああ、そうですそうです…門番にしては小さいでしょう?」
「え?…あ、ああ…」
「ですからねえ、先生もそれは難しい夢だとおっしゃりましてねえ…」

 大概死霊魔術の素材となるのは概ね成人と決まっている。若い少年の死体が使われる事は極稀である。
 しかしそれは倫理的あるいは感情的な抑制では無く。
 単に。背の伸び切った、成人の骨を良しとする、『美的』感覚に過ぎないのだ。
 さらに極論すれば…庶民の子どもの死亡が珍しくないこの地にあっては、むしろ成人の骨の方がどちらかと言えば珍しく、従って価値があるとされるのだ。

「それに。あたしの骨の悪さが…あの子にも移っちまったんですよ」
 女性が苦笑しながら背中を叩く。若い顔に似合わず、酷く曲がったその背骨…
 火山マグムノの秘めた火気の力、土地に過剰に溢れる異常な魔力…人であれ家畜であれ、この地で暮らせば皆身体と命を削ってしまう。
 マギスの国の特権階級、魔法貴族…真魔人とも呼ばれる種族を除いては。
 彼等真魔人…不本意ながら、ジャンもその末席に名を連ねる身なのである…の始祖達は遥か太古の昔において。その時分にも禁忌と言われた儀式によって…生きるに魔力を恐ろしく必要とする、人ならぬ存在へと自分達を変え果ててしまっていた…
 だからこそ、ジャンもこんな土地で造作も無く生きられるのだが。
 それでも眼の前の女性の腰をこれ程までに害したこの土地で、平気でいられる己が恐ろしい…

「それでね、神官様方も初めは駄目だとおっしゃられたそうで。まあ当然でしょう…」
 にこやかに、誰かに語るのが嬉しくて仕方が無い様子で…女性が話を続けている。
 眼の前の少年の困惑も知らず。

「それでもねえ…先生が口添えして下すって!口添え所か何度も通われて、神官様方を口説き落とされたそうでしてねえ…やっと」
 女性は一層眼を細める。

「神殿付きの職人方が御苦労して下すって。一度だって伸びなかった背もこんな奇麗に、それにまあ、こんな立派な誂え物まで!」
 女性が門番の揃いの衣装をそっと摘む。
 実際形は簡素だか、生地はなかなか悪く無い。
 彼女の身なりから察するに、この骸骨も生前この衣装以上に装えなかったのは確かだろう。

「…全く果報者ですよ、この子は!」
「は、はあ…」
 ジャンは激しく動揺していた。


 勿論見慣れた働く骸骨達が、元は生きた人間だった…当然の事を思い知らされた衝撃もある。幼い頃から品行方正の逆を行く性分であったから、条件つけられた事以外には全く抵抗しないのを良い事に…白い骸骨達に奇抜な落書をした事もある。しかしそれらの骸骨皆、死において誰かに涙を流させた…かつて生きていた人間だったのだ。
 だがそれ以上に、ジャンの頭が悲鳴を上げる。

 何故、死病の床の少年の夢が…より長く生きる事では無いのか!

 死を覚悟した少年の願いを、大人達が力を尽くして叶えてやる…それだけ聞けば、まるで良い物語にも聞こえるが。どんな夢であっても、叶えてやればそれで良いのか?
 確かにあの薬師は良い人間には違い無い。貧しい者達なら金を取らずに親切に診る。良く効く薬草を飲ませてやる。…だがそれも金持ち連中から相応の報酬を得ているからこそ出来る芸当。おまけに貧民達を診るに当たっては、無料でも諦めの付く程度の事しかせず…
 つまり女性の家に余分の金子があったなら。この少年も…せめてもう暫く生き存えたかも知れないのだ。
 成る程、少年の家は酷く貧しい家だから。床に伏せて働けぬ少年を、親達に養わせるのも酷い事だと思ったのかも知れない。こんな土地だから、薬師の仕事になかなか嫌な…それでいて必須の部分があるのも確かである。
 それは少年自身、良く判っていただろうし…
 何より。

「それに結構な額の謝礼なんぞを戴きましてねえ…本当に親孝行な子で」

 死霊魔術が少しも禁じられず表立って行われるこの国では。
 その素材は主に自発的に『提供』された物を用いていて。
 そして。当然…
 明日をも知れぬ貧しい民には、驚く程の…金額が礼金として必ず支払われる。

 女性は全く満足している。
 夭折した少年も本望であるだろう。


 だが何故、と言う思いは消えない。
 こんな事が成り立ってしまうのは。何の恨みも残さず…こんな出来事が行えるのは全て。
 この国がどうにも面妖だから。

 …成る程、苛烈な火山の女神を封じ。この土地をなんとか人の住める場所に変えたのは知識神の神官達と魔法貴族の真魔人達である。元々土地に住んでいた人間達が、彼等に深い感謝を抱く気持ちも判る。
 だが。彼等は皆、病に苦しみ…上流の者達の享受する、魔力による恩恵も何ら受け取れず。酷く貧しく苦しい暮らしのまま。
 如何に金に困ろうと、並の貧苦ならば…己の死体を売ってまで、金子(きんす)を得ようとはまずしないだろう。

 少なくとも。それを夢とはしないだろう…


 ジャンの頭はぐちゃぐちゃだ。


 ここはマギス、悪魔の国と人の言う…


Fin.


後記:
 実は連載中の長編幻獣 〜不可思議の生類〜禁忌の術のフォロー作でして。
 ちなみにジャン少年はあの話に出て来る白い髪の魔術師の、数年後輩に当たります。そこそこ設定作ってありますが…何せ色々あって十代の内に出奔して音信不通になるんで…本編には多分ずっとずっと出て来ません…いい奴なんですが(;;)
 あんな国なのに至極真っ当な感覚の持ち主なので、彼の視点でマギスと言う奇天烈な国を語らせるとスゲー面白いんです(^^;)
 で。
 あの話を未読の方には多少ネタバレになりますが、「あのゴブリン魔女のロウヒがなんであそこまでお師匠にビビったのか」の説明と言う事で。
 つまり…魔法王国マギスってのはコレくらいアレな国だって事で。

 まあこの魔法王国ってのは大陸中でめたくそ主流の『遍照大君』って光と正義の神様からは眼の仇にされてる国でして。だからポジション的にはファンタジー定番、『邪神を奉じる邪悪な民の国』って事になりますかね、光の神様の信徒さんからすれば。
 で。その評価もあながち間違いとは言い切れないのですが…大体どんな国でも内側から見ると違って来るもので。第一、前述の白い髪のお師匠みたいな人も住民だった訳ですし。異常なのは確かですが、それなりのルールもあり、それなりに治まってる国ではあります。内乱も全然で、国体は超安定やし。

 つまり。
 …子細あってマギスの貴族の子弟ながらも母国を斜めに見てるジャン少年視点で書いたのでアレですが、あの女性と息子さんを全否定する気は無いんですよ。幸福の形なんてホント人各々ですし。土地に毒があるのは判っていてもあの人達が国を去らないのは…苛政は虎(とら)よりも猛(たけ)し、って事で。
 この国の最下層の人達は、思いっ切りバカにされてる上に死ぬ程貧しいんですが…それでも絶対兵隊に取られる事が無いし(平和主義なんじゃ無くって、基本的に魔法貴族は魔力が異常に強い土地じゃないとやってけないから他国に攻めないだけ)、そんな過酷な賦役も無いし(優しいんじゃ無くって、アンデッドにバリバリ働かせるから)。血気盛んな騎士階級とかもほとんどゼロに等しいので、何かの拍子に因縁つけられて殺される事もまず無いし。あ、あと土地の魔力がウザい程あって潤ってるんで、税金もほぼゼロです。
 後、この国の開発者たる魔法貴族と知識神の神官達は当然特権階級化してますが、名目上の為政者は元来この土地を支配していた暴れん坊豪族の末裔です。つまり多少ゴツいだけのフツーの人間です。ただし凄いハーレムとかめたくそ派手な宮殿とか、鬼の様なサービスとラリ薬をたっぷり与えて全部傀儡にしちゃってます(−−;)…いや、そりゃイイ事とは言えませんが、そーゆー人達は元が元だからフツーの状態にしとくとこのスゲー魔法を武器に他国に攻めこんじゃえ!とか言い出しかねないので。
 とにかく国王とか領主とか、そう言うレベルの人間がパープーで野心ゼロなので、領主同士の衝突で大流血!とか面子争いで領地に大増税!とかの心配がありません…う〜ん…
 まあ。一応魔法貴族サン達は、野心バリバリで結果自分の国を思いっ切りツブした後ろ暗い思い出がありますからね。死体歩かせて何とも思わんのですから善人とは言えませんけど、頭脳明晰なだけに最低なバカはようせんのですよ。

 逆に言うとね〜、理想とロマン輝くファンタジー世界って業の深いモンがありますやね。
 身分制度ハゲしいし。人の命、超軽いし。一般に死霊魔術が禁忌の世界観が多めですが、その癖死体の山が累々や〜。勝手に身近な人間の死体歩かされたら堪りませんけど、個人的には自分が死んじゃった後は割とどうでもイイっス。てか、自分イデオロ的に死後の世界とか魂の不滅信じてませんから(^^;)
 作中ジャン少年が言うてたみたいに、アンデッド志願者がぎょうさんいてる事自体が異常なんですが。でも本人も家族も国全体も納得してる自然死した遺体を素材に使うのと、誰の了承も得んとドゴーン!とヤっちまうんとどっちがイカンのやろ?


 …段々キケン思想になって来たので(汗)、ちょっと話題を変えて。
 幻獣魔術師の本編の中の死霊魔術の説明、どー聞いてもどーもこーもに自分で書きながら思えてヘコんでおるのですが。つまりアレです、『生命』の根幹に人間なんかが関わっちゃ駄目だ!ちゅうイデオロが世界に浸透してる訳ですよ。だからキメラ合成に死霊魔術を応用してるって言うより新しく幻獣造るよーな類の事までひっくるめて、『禁忌のおぞましき術』と見なす風潮があると。…前述しました『遍照大君』ってコテコテの光と正義の神様ンとこの教義だと、もー新しく幻獣造る事自体が完璧『死霊魔術』カテゴリにブチ込まれてて。みょーな話ですが、マギスでもその分類受け入れてて…う〜ん…
 いや何を言いたいのかと申しますと、魔法の系統分類ってのもムズいよなァ、と言う事。

 だってですね、フツー現代のファンタジーでは所謂『ゴーレム』とか『ガーゴイル』の制作、タブー化してないっしょ?まあ確かに無機物に、疑似的に命を宿らせると言うか…むしろAIインストールするだけやし。だから一見新たな生物を造った様に見えても原理的にはゼンマイ仕掛けの人形と変わらんし。
 せやけどね、よくファンタジーに登場する『骸骨兵』、あれどーも生前の魂が入っているとは思えんのですよ。行動パターンちゃうし、ネクロマンサーの言う事よう聞くし。つまり…アレも何か人工物インストールしたんかいなあ思いまして。
 アンデッド系モンスターの伝説を探って行くと、死者の身体に生前の霊が戻って…と言うタイプのみならず、『悪霊』の類が潜り込んで悪さをする…と言う設定のものもある様です。
 つまり。
 イイ事では勿論無いですが、もしもネクロマンサーが死者を操るにあたって悪霊なりAIぽいものであり、とにかく死者の魂と無関係のモノをインストールする分には…少なくとも技術的に『ゴーレム』製作と変わらん気が。
 まあでも死者の身体を魔法の素材にするなんて、猛烈にイヤですがね。

 理論的、技術的にどうであっても、結局は…感情的に非常にイヤな、常識的に死者を冒涜し生命を軽んじていると思われるモノを全て丸ごと『死霊魔術』にカテゴライスすると、そう言う事ですかね。


 あ、後補足ですが事務的な話。
 複数の生物の身体を魔法で融合する事自体はそう難しくは無いのですが、無理にくっつけるので無理が出て、普通は死んでしまうのですよ。それで…非ィ科学的(?)な言い方ですが離れて行く『魂』を特殊な儀式で保持し、最終的にでき上がった融合体に定着させて初めて、キメラな生物に命が通います。
 複数の生物の身体と身体をくっつけるのは、死んだ動物を使えば無論簡単に出来ます。あのほれ日本の昔の『人魚のミイラ』とか。職人芸を駆使すれば、継ぎ目無く繋げる事なぞ造作もありません。
 せやけどソレが動かな何にもならん。
 各器官の連結なんかは肉体に残った『残留思念』の情報を利用し、細かく丁寧に繋いで。
 死んで行く肉体から離れる『魂』を捕縛し…つーか、ま、魔法で普通で無い死に方させて『魂』騙す訳やね…元の生物とは似ても似つかぬながらも一応整合性の取れた新たな肉体に、かなり強引に定着させる…
 まあその『魂の捕縛』とか『定着』とかがコードにひっかかると。その辺のために、『死霊魔術』扱いされてしまう…と。

 あ、あと。
 『死霊魔術』が禁忌とされていない…と何度も書きましたが、魔法王国マギスにおいてもコレを使いこなせる人間は結構少なめです。門番の『骸骨兵』の製作は割と簡単なのですが、幻獣を『造る』作業はかなりの技術を要します。
 だからむしろ。マギスでは禁忌とされていないと言うより、あまりに難易度の高い技術過ぎて、無闇に手を出す輩もまずいないと言う事なのです。


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(C)獅子牙龍児
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